2021年夏に開催された「東京2020オリンピック競技大会」で、Green Diningは大手外資スポンサー企業におけるカフェレストランを約1ヶ月間運営。コロナ禍の厳しい環境の中、求められるサービス品質を保ちながら、海外・国内参加者への料理提供を行いました。
おもてなしの舞台裏
このプロジェクトの相談がヨーロッパの担当者から最初に来たのは2018年。オリンピック開催が2020年から2021年に1年延期になったこともありますが、3年間にわたり海外の担当者とやり取りし、綿密な準備をしてきました。
コロナ禍中に海外からオリンピック関係者として日本にやってくる人たちは、感染拡大予防のために、「競技会場」、Green Diningがサービス提供する「スポンサー会場」、そして「ホテル」の3箇所を日々行き来し、それ以外の場所には1ヶ月もの間、一切行けないことになっていました。自由にレストランへも行けないため、Green Diningが料理を提供する会場で過ごすことの意味が、単に食事をする以上に非常に大事になります。Green Diningとしては、日々の料理の味はもちろんのこと、見た目も楽しめて、体にも優しい料理の提供に務めるのみならず、せっかく日本に来たのに観光もできない中で少しでも日本を感じられて、仕事の合間に楽しめる「おもてなし」のための工夫を考え、準備していきました。食のバリアフリーや、この企業やオリンピックの目標であるサステナビリティにも尽力しました。
オリンピック期間の料理提供
このカフェレストランで食事をするのは、スポンサー企業の担当社員、メディア関係者、メダリストなどのアスリートなど。人数は当初の予定よりもかなり絞られていました。提供したのは、朝食、ランチ、夕食の3食に加え、その間の時間のティーサービスと軽食です。1ヶ月続く料理提供では、主に以下のような内容を提供しました。
1. 参加者の嗜好に合わせて
日々、ヘルシーで、インターナショナルな料理内容を基本に、和食のメニューも取り入れて、複数のメニューからゲストに選んでもらえるスタイルにしました。毎日のメニューに飽きがこないよう、バラエティある組み合わせを考え、また、オリンピック参加のための来日であることから「オリンピック・スペシャル」と名付けた特別メニュー提供も。
期間中、最も気を配ったのが、ベジタリアン、グルテンフリーの対応です。提供する朝昼晩の料理には、必ずベジタリアンの料理、グルテンフリーの料理をいれました。ベジタリアンゲストの中には、より厳格で、卵と乳製品を摂取しないヴィーガンもいるとのことで、オリンピックが始まるまでに、何度もシェフと一緒にメニューの試作や確認を実施。クライアントも交えて1ヶ月分、全メニューの試作を繰り返し、事前の試食会も開催しました。また、レストランでは、デジタルサイネージを用意し、ディスプレイには、ベジタリアン( Vegetarian )対応メニュー、グルテンフリー( Gluten Free )対応メニュー用のアイコンを付けて表示し、安心して毎日の料理を楽しんでもらえるように工夫しました。
2. 滞在を楽しんでもらう工夫
日々のサービス提供では、ゲストの名前を覚えること、どのゲストがベジタリアン、グルテンフリー対応が必要なゲストなのかを把握するように心がけました。毎日、ゲストとの挨拶やちょっとした会話を通して、ゲストの皆様と少しずつ親しくなり、彼らがどんな食の嗜好があるのかを把握していきました。日が経つにつれて、ゲストの皆様ひとりひとりの顔と名前を覚えて、名前で会話できるようになりましたが、逆にゲストの皆様からも、Green Diningスタッフに対しても「Hi, Osamu!」などと名前で呼んでもらえるようになり、私達にとっても嬉しい日常の一コマになりました。
彼らゲストは、せっかく日本に来たのにコロナ禍の影響で行く場所は制限され、娯楽もないという中で、Green Diningからアイディアを出して行ったことがいくつかあります。例えば、毎日の食をバラエティあるものとすること。例えば、朝ごはんで言えば、パンデショコラやクロワッサン、サンドイッチにヘルシーなスムージーを摂りたい時はそれを選び、おにぎりに味噌汁という気分の時にはその選択が出来るようにしました。更に、週に1度、「テーマナイト」と名付けたテーマ性のある夕食会を別途開催する提案をしました。Green Diningが行ったのは「寿司ナイト」「焼き鳥&日本酒ナイト」「餃子ナイト」「バーガーナイト」です。特に日本の料理で行うテーマナイトでは、日本の食文化を海外の方にも紹介していきました。
自分たちで作成したウェブサイトやフライヤーでは、日々のメニューに写真を取り入れて情報発信。「テーマナイト」の日には現地で腕をふるうシェフの紹介や、料理の歴史や工夫している点などの説明を英語で行ったことで、「今日、あなたの紹介文を見たよ!」なんてシェフに気軽に声をかけてくれるゲストもいました。対面での気持ちのよいコミュニケーションを心がけるのはもちろんのこと、オンライン上でもさまざまな情報発信をすることで、ゲストの皆さんとの関係をより深めていきました。「今日、ウェブサイトに出ていたメニューと写真が美味しそうで、見ているだけでお腹すいてきたから、早めに食べにきたよ」とか「毎日ここでの食事が楽しみのひとつだよ。ありがとう」という嬉しいコメントをゲストから頂くことができました。
また、異国日本で誕生日を迎えるゲストがいる時は、バースデーケーキを出しなが、Green Diningスタッフ全員で「ハッピーバースデー」の歌をうたって一緒にお祝いするひとコマもありました。海外ゲストも現地の人たちも国籍関係なく、一緒になって、歌を歌うなんて、全員が笑顔を共有できる至極の時間です。
3. 環境に優しくサステナビリティ(持続可能性)のあるサービス
今回のクライアント企業が「環境への配慮、サステナビリティ」をコーポレートカルチャーとしてうたい、SDGsへの取り組みを実践していることから、その方針及び戦略に従ったサービスを提供する工夫も行いました。フードロスがないように日々の料理を用意する、つまり、数や量が少なすぎてもだめですが、余って食べ物を捨てるほど多く残ってもいけません。毎日細かく提供量やゲストの嗜好をデータにとりながら、ロスが発生しないように管理しました。
また、提供物に一切プラスティック製品を使わない方針となっていたことから、料理を出す容器は陶器で統一です。テイクアウト時の容器やスプーン、フォーク類も、プラスティックは使わずに紙や木製のものとなったため、例えば、ティータイムのテイクアウト用のクッキーもプラスチックの袋には入れずに、紙の袋に入れて渡す運用としました。日頃私たちが使っているものにいかにプラスティックが多いか実感させられる毎日となりました。
4. コロナ対策
約1ヶ月のサービス提供期間中は、感染リスクを抑えるため、人数を制限し、事前に登録したプロジェクトメンバーのみで行いました。そのため、限られた人数で業務に支障がでないよう工夫しました。更に、プロジェクト開催2週間前から毎日、PCRテストを全員受けて、感染していないことを日々確認し、クライアントへ報告を行いました。サービス提供では、例えば、トング使用や大皿提供はせず、料理は必ずひとつひとつ容器に入れることを徹底。テーブル使用のたびに丁寧にアルコール消毒し、除菌シートやスプレーを常に用意する、ということも日々のルーティーンワークに入れて、現場をいつも清潔で安心できる場所とするよう心がけていました。毎日、安心してこの場所での料理体験を楽しんでもらえる空間を作っていきました。
努力の甲斐あり、ゲストもGreen Diningスタッフも一名の感染者も出すことなく、無事にサービス提供を終了することができました。
最終日
約1ヶ月間、無事にこのプロジェクトが終了する時には、ゲストの多くの方からGreen Diningスタッフそれぞれに「君たちはこの忙しい1ヶ月が終わってほっとしているかもしれないけれど、明日から君たちの顔が見られないと思うと私は本当に寂しい気持ちでいっぱいだよ」「毎日、ここでの食事や皆さんとの時間がとっても楽しかったよ。また会える日があるといいな」なんてお言葉をかけてもらい、一緒に記念撮影する姿があちらこちらで見られました。
<この会が直接/間接的に貢献できるSDGs項目>
- 「目標14:海の豊かさを守ろう」
- 「目標15:陸の豊かさも守ろう」
- 「目標1:貧困をなくそう」
- 「目標2:飢餓をゼロに」
- 「目標3:すべての人に健康と福祉を」
- 「目標6:安全な水とトイレを世界中に」
- 「目標8:働きがいも経済成長も」
- 「目標13:気候変動に具体的な対策を」